中国が南シナ海を「火の海」にする日

以下は、月刊FACTA 8月12日(金)の記事の一部
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南沙諸島の滑走路は中国以外が支配する3島だけ。制空権確保へフィリピン軍の基地を攻撃か。

南シナ海の南沙諸島の領有権を主張する中国、ベトナム、フィリピンの対立がエスカレートしている。中国は海軍力の増強を背景に南シナ海の広い範囲で制海権を握りつつあり、ベトナムとフィリピンに挑発行為を繰り返している。今年2月には中国海軍の艦艇がフィリピンの漁船を威嚇射撃し、5月末には中国の監視船がベトナムの石油探査船の通信ケーブルを切断する事件が起きた。

これに対しベトナムは6月13日に南シナ海で実弾軍事演習を敢行。フィリピンも南沙諸島に近いパラワン島東沖のスールー海で6月28日から米国との合同軍事演習に踏み切り、中国を強く牽制した。3カ国の対立に歯止めがかからなければ、近い将来、南沙諸島で軍事紛争が勃発する可能性は十分ある。

中国の軍事費は今や米国に次ぐ世界第2位であり、軍事力だけで見れば小国のベトナム、フィリピンは相手にならない。特に南沙諸島の周辺海域から他国の船舶を排除する海軍力では中国が圧倒している。だが現実に紛争が起きた時、勝敗のカギを握るのは制海権よりもむしろ制空権だ。南シナ海の完全支配を狙う中国にとって、そこが“泣き所”であることは意外に知られていない。

■ベトナム軍が最新鋭機配備

南沙諸島は東西800キロ、南北600キロにおよぶ海域に100を超える小島や岩礁が散らばっている。最も大きな太平島(タイピンタオ)でも面積はわずか0.43平方キロしかない。太平島は台湾が実効支配しており、長さ1150メートルの滑走路を備えた軍事基地がある。このほか、南沙諸島で軍用機が離着陸できるのはフィリピンが実効支配する中業島(チヨンイエタオ)、ベトナムが実効支配する南威島(ナンウエイタオ)の三つだけだ。

一方、中国が実効支配しているのは島とは名ばかりの岩礁がほとんどで、飛行場の建設は事実上不可能。中国本土最南端の空軍基地がある海南島の三亜(サンヤー)から南沙諸島の北端までは直線距離で900キロも離れている。中国軍は海南島の南東330キロにある西沙諸島の永興島(ヨンシンタオ)に長さ2500メートルの滑走路を持つ前線基地を建設したが、ここからでもまだ600キロ以上ある。

これに対し、ベトナム本土南部のファンラン空軍基地から南沙諸島までの最短距離は500キロを切る。ベトナム空軍はロシアから購入した最新鋭の「Su-27」戦闘機12機、「Su-30」戦闘機9機をファンランに配備しており、数は少ないものの南沙諸島のほぼ全域で作戦行動が可能だ。Su-27とSu-30が装備する空対艦ミサイルの威力は絶大であり、中国海軍にとって大きな脅威。さらに、ベトナムは南威島の前線基地を拡大し、南沙諸島の“不沈空母”にしようとしている。

フィリピン軍の装備は旧式かつ脆弱だが、フィリピンは1951年に米国と軍事同盟「米比相互防衛条約」を結んでいる。米軍が91~92年にクラーク空軍基地とスービック海軍基地から撤退した後も同条約は維持された。その適用範囲に南沙諸島が含まれるかどうかについて、米国は中国に配慮して明言を避けているが、フィリピンは米軍の威を借りて中国に対抗する姿勢を強めている。

米国にとっても、南シナ海は同盟国の日本、韓国、台湾などに中東の原油や天然ガスを運ぶ重要ルートであり、中国による支配は受け入れられない。6月23日に訪米したフィリピンのアルベルト・デルロサリオ外相と会談したヒラリー・クリントン国務長官は、南沙諸島の領有権をめぐる中国の強硬姿勢を「地域の平和と安全に関する懸念と緊張を高めている」と批判し、「フィリピンの海上防衛力強化のために支援を惜しまない」と明言した。米海軍の原子力空母が南シナ海で睨みをきかせれば、南沙諸島に滑走路を持たない中国軍は手も足も出ない。
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南シナ海は、かつてのバルカン半島みたいな火薬庫なのだろうか。

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